相続とは?(相続)
相続とは、死亡した人(被相続人)の財産・債務を、被相続人の死亡により、相続人が包括的に承継することをいいます。
相続手続きと期限
人が亡くなったら(=相続が発生したら)、相続に関する数多くの手続きをしなければなりません。しかもそれぞれの期限は短く、大切なご親族が亡くなられて悲嘆に暮れている時間はないほどです。
相続が発生したときにやるべき主な手続きと期限は、次のとおりです。
(被相続人の死亡) | 死亡届 通夜・葬儀 初七日法要 四十九日法要 個人事業者の死亡届出・その他税制上の各種届出 役員変更登記・許認可事業の変更手続き 社会保険・国民健康保険・国民年金の届出 保険金・遺族年金の請求 遺言書・死因贈与契約書の確認 相続財産と債務の調査 相続人の確認(戸籍謄本等取寄せ) |
(3ヵ月以内) |
相続の承認又は放棄の選択 |
(4ヵ月以内) | 所得税・消費税の準確定申告 遺産の評価額の確定 遺産分割協議及び協議書作成 遺産の名義変更手続き |
(10ヵ月以内) | 相続税申告と納税 |
誰が相続人になるの?(相続人の範囲と順位)
相続ができる相続人の範囲とそれぞれの相続人がどのくらいの財産をもらえるか(相続分)は、民法に規定されています。
相続人が誰であるかは、被相続人の戸(除)籍謄本を取寄せて確認します。
(相続人の範囲と順位)
相続順位 | ||
血族 相続人 |
第1順位 | 子。 子が死亡している場合には、その代襲者(直系卑属)。 |
第2順位 | 父母など直系尊属。 第1順位がいないときに相続人になれます。 |
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第3順位 | 兄弟姉妹。 兄弟姉妹が死亡している場合には、その代襲者。 第1順位も第2順位もいないときに相続人になれます。 |
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配偶者 相続人 |
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。 |
誰がどのくらいの財産をもらえるの?(法定相続分)
配偶者と子が相続人の場合 | (配偶者)相続財産の1/2 ( 子 )相続財産の1/2を子の人数で均等に割ります。 |
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配偶者と父母(直径尊属)が相続人の場合 | (配偶者)相続財産の2/3 (父母)相続財産の1/3を父母の人数で均等に割ります。 |
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配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 | (配偶者)相続財産の3/4 (兄弟姉妹)相続財産の1/4を兄弟姉妹の人数で均等に割ります。 |
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相続税がかかる財産にはどんなものがあるの?(課税財産)
相続税は、死亡した人の財産を相続や遺贈によって取得した場合(相続時精算課税の適用の贈与財産や相続開始前3年以内の贈与財産等も含まれます)にかかります。
この場合の財産とは、現金、預貯金、家財道具、有価証券、宝石、土地、家屋、貸付金などのほか生命保険金、退職金など金銭的価値のあるものすべてのものをいいます。
相続税がかからない財産もあるの?(非課税財産)
相続財産の中には、次のような相続税がかからない財産(非課税財産)もあります。
墓地、仏壇、仏具 |
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生命保険金・・・相続人が受け取った生命保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」以下の金額 |
退職金・・・相続人が受け取った退職金のうち、「500万円×法定相続人の数」以下の金額 |
国等へ寄付した相続財産 |
私にも相続税がかかるの?(基礎控除)
相続税は、課税財産から債務(借入金、未払医療費、預り敷金など)及び葬式費用を控除した金額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)より、大きい場合にかかります。
私の場合は相続税がどのくらいかかるの?(相続税概算額)
[相続税概算額一覧表](単位:万円)
相続人 /課税価格 |
配偶者と子 | 子だけ | ||
子1人 | 子2人 | 子1人 | 子2人 | |
0.5億円 | 40 | 10 | 160 | 80 |
0.75億円 |
197 | 143 | 580 | 395 |
1億円 | 385 | 315 | 1,220 | 770 |
1.25億円 | 630 | 523 | 1,970 | 1,260 |
1.5億円 | 920 | 747 | 2,860 | 1,840 |
2億円 | 1,670 | 1,350 | 4,860 | 3,340 |
2.5億円 | 2,460 | 1,985 | 6,930 | 4,920 |
3億円 | 3,460 | 2,860 | 9,180 | 6,920 |
4億円 | 5,460 | 4,610 | 14,000 | 10,920 |
5億円 | 7,605 | 6,555 | 19,000 | 15,210 |
※相続税額は、相続人全員の支払額の総額になります。
※配偶者がいる場合には、配偶者が1/2を相続するとして、配偶者の税額軽減の適用を受けた相続税額になります。
配偶者には相続税がかからないの?(配偶者の税額軽減)
配偶者に対する相続税については、被相続人死亡後における老後の生活保障を考慮して、一定の要件(※1)のもと、相続税の軽減が図られています。
具体的には、配偶者が相続した財産の課税価格について、次の金額のうちいずれか大きい金額までは、相続税はかかりません。
民法上の配偶者の法定相続分
1億6,000万円
(※1)一定の要件
・相続税の申告期限までに配偶者が実際に財産を相続したこと
・申告書に一定の書類を添付すること
相続税の申告はいつまでにしたらいいの?(相続税の申告・納税の期限)
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内です。
例えば、1月6日に死亡した場合には、その年の11月6日が申告期限になります。相続税の納税期限も申告期限と同じです。
遺言書が見つかった場合はどうすればいいの?(遺言書の検印)
民法の規定で、遺言による遺産分割は法定相続人の協議による遺産分割より優先します。従って、遺産分割協議を行って後で遺言書が発見された場合には、分割のやり直しを行うことになります。ですから、相続が発生したら、まず遺言書の有無の確認をします。
遺言書を見つけた場合には、勝手に開封してはいけません。速やかに家庭裁判所に提出して、検印を受けなければなりません。
検印を受けずに開封した場合には、5万円以下の科料が課されます。また、故意に遺言書を隠匿した場合には相続人の資格を失うことがありますので、ご注意ください。
遺言書があるか否かはどう確認したらいいの?(遺言書の種類)
遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。そこで、それぞれの種類にそってご説明いたします。
公正証書遺言
公正証書遺言は、平成元年以降の遺言はデータベース化されていますので、全国どこの公証役場に行っても、遺言の確認ができます。
ただし、照会できるのは、秘密保持の観点から相続人等利害関係人のみです。
戸籍謄本等と照会者の身分証明書を公証役場に提示して、公正証書遺言が存在する場合には、その謄本を申請できます。
なお、遺言者の生存中には、遺言者以外の者が公正証書遺言の有無を公証役場に照会することはできません。
なお、家庭裁判所の検印は必要ありません。
自筆証書遺言
秘密証書遺言
自筆証書遺言又は秘密証書遺言が見つかった場合には、すぐに開封してはいけません。家庭裁判所に相続人全員で行って、検印を受ける必要があります。
遺言書が複数ある場合には、最も新しい日付で書かれた遺言書が有効です。
自筆証書遺言や秘密証書遺言は発見できない危険性があります。
自筆証書遺言の発見のされにくさ、偽造・変造の可能性が高いなどを補完するため、令和2年7月10日から自筆証書遺言の保管制度(法務局で保管し、相続発生後に相続人が閲覧できる制度)が開始されました。
遺言者が亡くなられた後であれば、法務局にこの制度を利用して遺言書が保管されているかどうか確認できます。
遺言を書くときは遺留分に注意ってどういうこと?(遺留分)
民法では、相続人が最低相続できる一定割合を保証しています。この最低保証割合を遺留分といいます。
遺留分の権利があるのは、法定相続人のうち、配偶者、直系卑属(子または孫)、直系尊属(父母または祖父母)に限られています。兄弟姉妹には認められていません。
例えば、相続人が子供2人(兄弟)だけのときに、兄に相続財産の全部を取得させると遺言した場合、弟は遺留分1/4がありますが、遺言書が無効になるわけではありません。弟は侵害されている遺留分の財産を取り戻すために、遺留分減殺請求をすることができます。
減殺請求の方法は特に定められていませんが、請求内容と請求時期を明確にするため、通常は内容証明郵便が使われます。減殺請求は、相続開始と遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内です。また、相続開始から10年経過したら時効により消滅します。
[遺留分の割合]
相続人 | 遺留分 |
配偶者又は子が相続人にいるとき | 相続分の1/2 |
父母のみが相続人 | 相続分の1/3 |
[具体的な遺留分の例示]
配偶者と子3人が相続人の場合
(配偶者)相続財産の1/2×1/2=1/4(遺留分)
( 子 )相続財産の1/2×1/3×1/2=1/12(遺留分)
配偶者と母が相続人の場合
(配偶者)相続財産の2/3×1/2=1/3(遺留分)
( 母 )相続財産の1/3×1/2=1/6(遺留分)
配偶者と兄(兄弟姉妹)が相続人の場合
(配偶者)相続財産の1/2(遺留分)
( 兄 )遺留分はありません
被相続人に多額の借金があったらどうするの?(相続の承認又は放棄)
被相続人が残したものが財産よりも借入金の方が多いケースだと、相続したくないと考える相続人もいるでしょう。
単純承認
相続開始を知った日から3ヵ月以内に意思表示をしなった場合には、自動的に単純承認したものとみなされます。
相続放棄
相続したくないときには、相続が開始されたことを知ったときから3ヵ月以内であれば、相続放棄することができます。相続放棄の手続きは家庭裁判所で行います。放棄すると、その者は最初から相続人ではなかったものとみなされます。相続放棄をした子や孫は代襲相続をすることはできません。
その結果、ほかの相続人の相続分が増加したり、相続順位が繰り下がって新たに相続人になる者が現れたりする場合もあります。
限定承認
被相続人が残したものが財産よりも借入金の方が多いケースでも、財産のうちにどうしても相続したい財産がある場合には、その財産の範囲内で債務を履行するという条件付きで相続することができます。これを限定承認といいます。限定承認の手続きも相続放棄と同じで、相続が開始されたことを知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きを行います。ただし、限定承認は相続人全員で行う必要があります。
〈注意〉
限定承認をした場合には、被相続人が相続人にその相続開始の時にその資産を時価で譲渡したものとみなして、譲渡所得等の所得税が課税されます。
被相続人の所得税や消費税の確定申告もしないといけないの?(所得税・消費税の準確定申告)
被相続人が所得税や消費税の確定申告が必要な人ならば、相続が開始されたことを知ったときから4ヵ月以内に、相続人が確定申告をする必要があります。
遺産分割はどのようにするの?(遺産分割協議書)
相続が発生すると、誰がどの遺産を相続するか相続人全員で協議して決めていかなければなりません。
なお、遺言書は遺産分割協議書より優先されますので、遺言書があれば遺産分割協議はいらないことになります。ただし、遺言で遺贈すると書かれていてもその本人は放棄することができますので、その場合には遺産分割協議が必要になります。
遺産の分割方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割があります。
現物分割 | 遺産をそのままの現物で、相続人で分ける方法です。 もっとも一般的な分割方法です。 |
換価分割 | 遺産をそのままの現物で、相続人で分ける方法です。 もっとも一般的な分割方法です。 |
代償分割 | 相続人の一人が多めに遺産を取得した場合に、 その代償としてその者の金銭等を他の相続人に渡す方法です。 |
共有分割 | 遺産の一部又は全部を複数の相続人が共有持分にする方法です。 |
遺産分割がまとまったら、分割内容を文書にして、相続人全員の署名・押印(実印)します。この文書を遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議書が完成したら、その遺産分割協議書を提示して、預貯金、不動産その他の遺産の移転手続きをします。
相続が発生したら手続きにはどんなものがあるの?(手続きリスト~分割前~)
・死亡届 | ||||
・保険金の請求 | ||||
・遺族年金等の請求 | ||||
・葬祭費・埋葬料の請求 | ||||
・高額療養費の請求 | ||||
・公共料金の名義変更 | ||||
・固定資産税の納税義務者変更 | ||||
・役員変更登記 |
・死亡届
死亡確認後7日以内に死亡診断書を添付して市区町村役場に届け出ます。死亡届は、埋火葬許可書をもらうのに必要になります。早めに届出ましょう。
・保険金の請求
被相続人の預貯金の引出すには、相続人全員の戸籍謄本や同意書等が必要になりますが、死亡保険金の請求は、保険金受取人単独で行うことができます。葬式費用の支払いや相続人の生活費に充てるために、早めに請求しましょう。請求に必要な書類は、保険証券、死亡診断書、死亡した人の住民票除票、被保険者の戸籍謄本などです。
・遺族年金の請求
遺族年金の請求は、国民年金加入者は市町村役場へ、厚生年金加入者は日本年金機構へ、共済年金加入者は共済組合へ問合せします。
なお、死亡した人が受け取れるはずの年金は、生計を一にしていた相続人等が受け取ることができます。最寄りの年金事務所などへ請求しましょう。
・葬祭費・埋葬料の請求
死亡した人が国民健康保険加入者なら、葬祭費が支給されますので、市町村役場に請求しましょう。死亡した人が健康保険組合加入者なら、埋葬料が支給されますので、健康保険組合に請求しましょう。
・高額療養費の請求
死亡した人の医療費の支払いが高額になったときは、死亡した人が加入していた公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国民健康保険、後期高齢者医療制度、共済組合)に病院の領収書等を添付するなどして高額療養費の支給申請をしましょう。公的医療保険によっては自動的に口座振り込みされるところもあります。
・公共料金の名義変更
死亡した人が契約者となっている電気、ガス、水道、電話等の名義変更をしましょう。領収書に記載された連絡先等を頼りに連絡します。
・固定資産税の納税義務書変更
固定資産税は、毎年1月1日に固定資産を所有していた人に課税されます。その所有者が死亡した場合には、その死亡した人の所有していた資産は、遺産分割が確定するまでは相続人全員の共有になります。相続登記が完了する前には、相続人代表者宛に納税通知書が送られてくることになりますので、市町村役場に相続人代表者指定届出を提出する必要があります。なお、この相続人代表者が全額納税しなければならないというわけではありません。
・法人役員の変更
死亡した者が法人役員であった者が場合には、役員変更が生じることになるので、その死亡の日から2週間以内に役員変更登記をしなければなりません。

